トリセツでは様々な数値と単位を扱いますが、国際単位系いわゆるSI単位のルールに沿った(計量法に従った)表記が求められ、場合によっては数値換算が必要な場面があります。
数値と単位には、SI単位やJIS規格など従うべきルールがありますが、トリセツ表記にはそれ以外にも注意すべき点がいくつかあります。
というわけで本記事はトリセツにおける数値と単位の表記方法についての話です。
SI単位について
今では表記ミスを除き、SI単位のルールに従っていないトリセツの単位表記を目にすることはほとんどなくなりましたが、これは1993年11月に新・計量法が施行されたためです。
新・計量法によって定められている「法定計量単位」から非SI単位が除外され、「取引」や「証明」に非SI単位を使用することが禁止されました。当然、計量法は法律であるため、違反には罰金が科せられます。
SI単位については「ジャパンナレッジ」サイトがわかりやすいと思うのでリンク共有します。
トリセツのSI単位表記
新・計量法以降、トリセツ表記もSI単位化が求められるようになったのは事実ですが、厳密にはトリセツはこれに従う必要はありません。(下図参照)
- 優先順位その1:ユーザーに馴染みのある(わかりやすい)表記にする
- 優先順位その2:製品の表記方法と合わせる
- 優先順位その3:SI単位(法定計量単位)に合わせる
数値と単位の間のスペースについて
上記のとおり数値と単位の間には1文字分のスペースを入れます。数字と単位は一般的に半角なので、半角スペースを入れることが多いです。
数値と単位の間に入れる「ノーブレークスペース」とは
スペースにはいくつか種類がありますが、数値と単位の間のスペースには「改行をしないスペース」(ノーブレークスペース【no-break space、NBSP】)を使います。通常のスペースでもいいのですが、表内やページの端では、数値と単位が「泣き別れ」(印刷用語で1行内、1ページ内で表現したい内容が分割されてしまうこと)を起こしてしまうため制作会社が一から制作したトリセツではNBSPが使われているケースが多いでしょう。
MS-Wordで「ノーブレークスペース」を入力する方法
MS-Wordでは「ノーブレークスペース」のことを「改行をしないスペース」と言います。
Wordで入力するにはショートカットキーで入力するのが一番手っ取り早いです。
[Ctrl] + [Shift] + [Space]
その他にも特殊文字として入力する方法があるのでご紹介します。
- 「HTML」コードの途中に
と入力するとノーブレークスペースを入力することができます。 - 「InDesign」では、「書式」メニューの「空白文字を挿入」で「分散禁止スペース」を選ぶことで、ノーブレークスペースが挿入されます。
単位換算について
トリセツの数値に関しては、基本的には図面などの設計情報を使用するので、知識として知っておくという意味合いが強いのですが、実際に数値を表記するときには、図面などの内部文書の記載単位がSI単位になっていないときや、国ごとの法定単位にローカライズするときなどに単位換算することがあります。単位換算で重要なのは、「有効桁数」と「数字の丸め方」の部分です。
トリセツの数値の丸め方
トリセツで数字の丸めを行うときは、単純に四捨五入するというだけでなくて、その数値の意味を考えなくてはなりません。
数字の丸め方には以下の3種類があります。
- 四捨五入
- 切り上げ
- 切り捨て
数値の丸め方の使い分け
正解があるというものでもありませんが、より適切に換算する方法としては、MAX値(最大値)を示す数値の場合は切り捨て、MIN(最小値)を示す数値の場合は切り上げでトリセツには表記します。それ以外の数値は四捨五入の場合が多いです。
例)
- 「10 kgまでなら送料無料です。」→「切り上げ」、「四捨五入」では10 kgを超えてしまう可能性があるので、「切り捨て」が適切。
- 「最低3.5 m/sで運転してください。」→「四捨五入」、「切り捨て」では3.5 m/sを下回る可能性があるので、「切り上げ」が適切。
また、数値を換算するとき、割り切れなかったりして小数点以下の桁数が多くなることがあるため、どの桁数で丸めるかというルール決めが必要になります。
丸める桁数を決める方法は2種類あって、「少数点以下〇桁」と「有効桁数○桁」です。有効桁数というのは、「数字として意味のある桁数」ということのようですが、少数点以下であっても整数であっても、桁の大きい方から数えた桁数で表現されます。
最終的には設計的な判断が必要になると思いますが、トリセツ制作者がこれらの意味を理解することで、正確な単位換算が可能になります。
JIS丸め(銀行丸め)
たまに「有効3桁でJIS丸めで換算」という感じの要望をいただくことがあります。
JIS丸めというのは四捨五入の手法でJIS Z 8401に規定されている端数処理の方法です。四捨五入は通常5以上は切り上げで、4以下は切り捨てすると思いますが、5を常に切り上げすると結果に微妙な偏りが生じてしまいます。この偏りを最小限にするために、5を四捨五入する場合(5が末尾の場合と5以下の数字が0のとき)、その前の数字が偶数になるように切り上げ、切り捨てをする方法です。