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【トリセツ(マニュアル)作成の相場感】~トリセツをアウトソーシングするときの注意点~

システム開発の見積りはすごく難しいとよく聞きますが、正直トリセツの見積りも激ムズです。

理由は簡単でトリセツでは、その説明対象となる製品が完成しないうちに作り始めるからです。そのため、必要となる情報や必要な制作工程が決まらず見積金額もあいまいなものになってしまいます。

そういう事情から見積り手法も多種多様となっていて発注する側から見ると非常に発注しにくい状況を受注側が自ら作り出してしまっているように思います。

今回はトリセツの見積り方法と相場感について考察しましたので、トリセツ制作の外注選定や受注の際の見積り作成のご参考にどうぞ。

目次

トリセツの見積り概要

ネット等で調べてもなかなか相場はわからないと思うので自分の経験上の相場感を記載しますが、制作工程の相場感はだいたいページあたり5000円~15000円ぐらい(印刷や構造化、翻訳、動画作成等を除く)でしょうか。

これに加えて、印刷費、Web化など電子化する際はその費用が発生してきます。

制作工程の組み方によって変わりますが、概ね以下のような見積項目が考えられます。

トリセツの見積り細目

トリセツ制作の見積り方法は大きく分けて、ページや文字数など成果物に依存した単価設定で算出する方法と時間単価で算出する方法と2種類あります。

企画・構成費

どんなトリセツにするかを決める費用です。システム開発における要件定義に当たる部分です。トリセツのレイアウトや目次構成、構成要素、用語の使い方やイラストを使う箇所などを決めます。逆に似た製品の既存トリセツが存在するなど完成イメージが明確な場合は必要ない工程です。

調査・取材・ライティング・校閲費

実際に制作の軸になる部分の工程です。資料や情報が具体的であればあるほど費用は少なくなります。ただし、具体的な情報提供になればなるほど、発注側の工数が増えて、トリセツ専門家の知見がライティングに反映されにくくなるため、一番価格を決めるのが難しく、会社ごとの差異も大きくなる部分です。

また、取り扱いに専門的な知識が必要な分野の場合は、制作会社によってはライティング不可能という場合もあります。

ルーティーンワーク化が進んでいて、ページ数がある程度想定できる場合は、パラメトリック法によるページ単価で費用を算出するケースもあります。

イラスト作成・校正費

イラストと言っても、写真、テクニカルイラスト、CADデータをそのまま利用するなど、いくつか種類があります。いずれにしても、要した時間に応じた単価になるため、実物、図面や写真などの資料が具体的であればあるほど、費用は少なくなります。

DTP・デザイン・校正費

Wordなどの既製品であったり、独自の編集システムであったり、選択する制作ツールによって単価は異なります。必要な制作ツールを用意できない場合、購入する必要があるため、具体的な指定がある場合はそのあたりは制作会社にあらかじめ確認しておくべきでしょう。制作後の元データ納品の有無なども価格に影響します。また、テンプレート作成費や表紙デザインはだいたい別の単価設定になります。

ページ数がある程度想定できる場合は、パラメトリック法によるページ単価で費用を算出するケースもあります。

管理費・雑費

進捗管理や品質管理、または校閲依頼の調整などに掛かる工数や校正紙代や交通費など諸々の費用に関する項目です。

これらの費用のうち実費で算出できるもの以外は全体の金額にパーセンテージを掛けて算出することが多いと思います。

印刷費

基本的には「固定費+部数×色数」という感じで計算しますが、部数が少ない場合は、「オンデマンド印刷」を利用し、部数が多い場合は「オフセット印刷」を利用したほうが安くなります。以下のサイトが非常にわかりやすいです。

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構造化(CCMS対応やWeb化対応など)

構造化はそれ自体がシステム開発でもあるため、目的や手法によって、また、制作会社によって見積り価格は全く異なりますが、DITAによる構造化の場合は、それだけで一般的に数百万、数千万単位の金額がかかります。高額なだけに目的を明確にして、しっかりした検討が必要になります。

構造化の注意点

例えば、DITAによるメリットの1つはトピックによるデータベース化です。つまり同じ修正内容を様々なドキュメントに何度もいれる必要がなく、トピックを1つ修正すればすべての文書を更新できるという部分です。一見するとかなり大きなメリットに見えますが、これを効果的に実現できているシステムを自分は見たことがありません。何故かと言いますと、トピックを共有しているが故に、修正してはならない記述が勝手に修正されてしまうというリスクが同時に発生するからです。つまりトピックを共有する最初の段階で、共有できる記述か否かをしっかり判断できる技術と、共有可能なライティングができる技術が制作メンバー全体に備わっていないとこのメリットを享受できないためです。

DITA編集システムの一例

Web化の見積り例

構造化といっても単にWeb化したいだけの場合は通常のWeb制作の範囲で制作可能だと思います。

LISKUL
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動画作成

Webマニュアルや動画マニュアルなどの場合は、通常のトリセツとは全く別の見積構成になります。最近では動画マニュアル制作ソフトもいろいろあるので自社制作したい場合は検討対象になるでしょう。

台本や絵コンテなどシナリオ作成費、動画撮影費、動画編集費、ナレーション費、翻訳費、機材やスタジオのレンタル費用、ディレクション費などが掛かりますが、マニュアル動画の相場感としては、数分間で数十万といったところでしょう。

動画関連の見積り紹介サイト

ClipLine株式会社
ClipLine株式会社 ClipLine株式会社の公式コーポレートサイトです。私たちは「『できる』をふやす」をミッションに掲げ、サービス業の様々な課題を解決する事業・プロダクトを生み出し続けま...

動画マニュアル制作ソフトの紹介サイト

翻訳費

日本語以外の言語のマニュアルを作成する際、発生する費用です。文字単価で計算されることが多いです。言語や難易度によって違いがありますが、トリセツの場合だと、10円/文字~20円/文字ぐらいでしょうか。

制作対象の分野にもよりますが、ネイティブチェック対応やWordレイアウト対応、翻訳メモリー対応、用語集作成対応など、対応範囲と費用設定は翻訳会社によって異なります。

翻訳関連の見積り紹介サイト

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工数での見積り方法の内部事情

工数での見積り方法は基本的にはシステム開発の手法と同じです。

概ね3種類の方法があります。

  • トップダウン法(過去事例や経験による算出方法)(新規顧客)
  • パラメトリック法(工程ごとに過去実績に基づく係数を設定して算出する方法)(継続顧客)
  • ボトムアップ法(要素作業ごとに工数を予想して算出する方法)(継続顧客)

上記3つが困難なケースでは以下のような手法を使うケースもあります。

  • プライス・ツー・ウィン法(顧客予算に応じて作業工程を決めて算出する方法)(新規顧客)
  • パーキンソン法(自社リソースに基づき算出する方法)(新規顧客)

トップダウン法

例えば、製品の仕様の確度であったり、校閲の規模や手法、構成の確度、基準となるトリセツの有無、制作ツールの特性などを考慮しながら、ある程度経験を積んだ担当者が見積りを作成します。

パラメトリック法

ある程度制作工程が定まっている場合は、この手法を使います。例えば、原稿作成では、ページあたりどれぐらいの工数を要するか、DTP編集では1回あたりの工数、資料や取材の種類ごとにかかる工数など、実績から類推し、係数を作成します。

ボトムアップ法

見積り精度を高めるために使用する手法です。1つ1つの作業要素に対して、どれぐらいの工数がかかるかを予想します。かなり詳細な事前情報が必要なので、見積りを作るために双方にかなり工数がかかってしまう上、平行作業などによる効率化を盛り込みづらいため、金額が大きくなる傾向があります。

プライス・ツー・ウィン法

予算に応じて優先すべき作業を限定して作成していきます。品質リスクが増加したり、発注側に多くの作業が発生する可能性があるため、あまりお勧めはできません。

パーキンソン法

例えば、担当者1人分の工数を制作期間中確保できる場合、その工数を1か月単位で取り決めるような受注の仕方をすることがあります。担当者のスキルに大きく依存するので、担当者のスキルがある程度わかっている場合にのみ適用できる方法です。

ベストな見積方法とは?

どれが正解ということはありませんが、より納得感を高めるためには、おまかせするのではなく見積り根拠を聞いていくと良いと思います。自分の場合は、「トップダウン法」「パラメトリック法」の中間ぐらいの方法で、尚且つイレギュラーな要件が発生した際は、「ボトムアップ法」で算出していく方法で見積りするケースが多いです。

見積額を抑えるためのコツ

制作会社もなるべく安い見積り金額を提示できるように日々努力しているわけですが、依頼内容が具体的でないと、要求品質を満たすために過剰な努力を強いられてしまいます。この過剰な努力は当然見積り価格に反映されているため、具体的な制作イメージをどれだけ共有できるかが納得感のある見積りにするための鍵になります。

1.目的を明確にする

例えば、以下のような目的を制作会社に伝えることで価格を抑えられる可能性があります。

  • 社内工数の確保
  • コスト低減
  • 品質向上
  • 企画提案

目的を明確にすることで、余分な作業を減らすことに繋がります。例えば、「コスト低減」であったり、「社内工数の確保」という観点での依頼であった場合、制作会社はできるだけ既存の表現やフォームを踏襲して作成しようとしますが、「品質向上」や、「企画提案」という要望である場合は、既存の表現やフォームの問題点を改善する努力をしながら作成することになります。

2.十分な資料を最初から提供する

「図面」「製品スペック」「機能仕様」「操作方法」「法規・安全関連の記載要件」「トラブルシューティング」「保守関連の情報」などの製品情報はもちろんですが、「ベースとなる既存トリセツ」「用語集」「CIなどの表現上の決まりごと」(CI: Corporate Identity)などがある場合、それらが最初から提供されるかどうかで調査や取材、ライティング自体にかかる工数が変わってくるので見積額を左右します。

3.要望事項はできるだけ具体的に

トリセツを新規で作成する場合は、紙面のデザインに関する要望はできるだけ具体的なイメージがあると良いです。イメージが全く無くても、制作会社がデザインサンプルを作成するなどして完成イメージを提示してもらえるとは思いますが、もちろんそこにも費用は発生しています。例えば、「紙面サイズ」であったり、「使用フォントやアイコン」であったり、「紙面配置」(レイアウト)のイメージをあらかじめ指定していただいた方が、企画費の低減に繋がります。

リライトの場合は、リライトしてほしい箇所やリライト方針を明確にすると良いです。全体を精読してリライトを行う作業は場合によっては新規作成と同程度の工数を要します。例えば、「内容を変えずに文章量を減らしたい。」とか、「用語統一したい」とか、「誤記や文法ミスを無くしたい」「製品改訂部分だけをリライトしてほしい」などの具体的な方針があると費用低減に繋がります。

4.イラストはほどほどに

イラストは多ければ多いほどトリセツとしてはわかりやすい説明に繋がりやすく、デザイン的にも目を引くものになりやすいですが、イラストを使う箇所は、ある程度上限を定めたほうがよいでしょう。例えば「1ページに1枚程度のイラストを使いたい」「各タイトルに1枚程度のイラストを使いたい」「全体で何点ほどに抑えてほしい」などです。

また、イラストに関しても、イメージを指示しておいた方がいいでしょう。例えば、「基本的にアイソメ図にしてほしい」「写真トレースで強調箇所だけ線を太くしてほしい」「イラスト内に文字は入れないでほしい」などです。完成イメージをできるだけ共有することで、手戻りの回数を減らすことなるため、費用低減に繋がります。

5.制作工程を共有する

通常トリセツを制作する工程は、大雑把に説明すると「原稿を作成」して、「責任部門(設計者)の校閲」をして、「再度原稿を修正」して「完成」となりますが、例えば内容を変更しないリライトだけの場合は、設計者の校閲を必要としません。このように不要な工程があるケースは特に事前に制作工程の認識を合わせておかないと、思わぬ無駄な工程が発生してしまい、金額の納得感が低くなってしまいます。

アウトソーシングしない方が良いケース

1.極端に見積り金額が高いケース

バッファを大きくみているケースと元々その制作会社の金額が高いケースが考えられますが、予算が合わなければ無理に発注すべきではないでしょう。

2.極端に見積り金額が安いケース

元々単価設定の低い制作会社であれば問題ないですが、作業内容や成果物の品質レベルこ認識に齟齬がでているケースがあるため、慎重に判断したほうがよいでしょう。

3.見積り根拠の説明に応じてもらえないケース

これは受注側の問題ばかりではなく、発注側が見積条件を提示できていないケースも考えられます。いずれにしても後で紛争の元となるため避けた方が無難です。

4.制作スケジュールが合わないケース

トリセツ制作に十分な期間が取れない場合、特に新規制作会社に依頼するのは非常に大きなリスクを伴います。十分に日程を話し合って発注すべきです。

5.完成イメージが共有できないケース

正直いって何度聞いても完成イメージが共有できないケースも存在します。制作側の勉強不足のケースがほとんどですが、発注する側からすると、理解してもらえないなと感じたら、発注するのは辞めておいたほうがいいでしょう。

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